田舎と都会と鍵

私が生まれ育ったのは地方の田舎で、たいていの家は玄関の鍵を開けっ放しにしていました。
長時間家を空けるときはさすがに戸締まりをしましたが、ちょこっと近所に買い物に行く程度でしたら面倒なので鍵などかけません。
夜寝るときも気が向けばかけますが、ひと月の三分の一もかけていたらいいほうではないでしょうか。
鍵を持ち慣れていないせいか、鍵をかけて外出したらそのままなくしてしまい、家に入れなくて困ったなどという話を周囲でよく耳にしていたような気がします。
小学生のころ、いわゆる鍵っ子と呼ばれる存在の同級生がいました。
母親が働きにでていて家を空けているため、子供は自分で玄関の鍵を開けて家の中に入るのです。
その同級生がペンダントのようにひもの付いた鍵を首からさげているのを見て、なんだか大人のようでかっこいいと感じたのを覚えています。
そんな私も大学進学を機に田舎を離れ、東京で一人暮らしをするころになりました。
都会は物騒なところだとさんざん親に教え込まれていたため、近くのコンビニに行くときはもちろん、自分が家の中にいるときも鍵を閉める生活になりました。
ただやはりそれまで鍵とはほぼ無縁の生活だったため、最初は鍵の管理がとても煩わしいものに感じました。
まず一人暮らしですから、外出先で鍵をなくしでもしたら大家さんにお願いしない限り家には入れません。
そのことはとても私を不安にさせました。
なので一人暮らし初期のころはスペアの鍵を5本作って、そのうちの2本をバッグとコートのポケットなどと別々の場所にしまって外出していました。
また逆に家にいるときも、うっかり鍵を置き忘れたりなどして、どこにあるのか見つからなければ外出することができません。
急いでいるときなどは本当に困ります。
そのためそれもスペアの鍵の残り三本を部屋の中で分けて置いておくことで不安を解消しました。
今ではすっかりそのようなことにも慣れましたが、改めて考えてみると、鍵のように細かなものを日常的に持ち歩いて、きちんと管理している人間ってすごいなあと思ってしまいました。